イベントレポート | SPEAKER 田中杏子さん

開催されたPOLA TALKER’S MUSEUMの内容をご覧いただけます。

POLA TALKER’S TABLE

POLA TALKER’S MUSEUM REPORT

12.20(wed)
点と点を組み合わせて生み出す、ファッションのNEW VALUE

SPEAKER 田中 杏子さん

今回はいつもの『POLA TALKER'S MUSEUM』とは少し異なる雰囲気です。というのも、普段は男女の参加者比率が半々程度なのに対し、今回は全員が女性!これは今回のゲストに起因していると言えるでしょう。そんな今回のゲストは、雑誌Numéro TOKYO編集長の田中杏子さんです。

Numéroといえばモード系雑誌の代表各。「毒抜きされたモード誌は、もういらない。」というテーマをもとに流行に敏感な女性たちを刺激し続けている雑誌です。参加者の過半数がメモを必死に取るぐらい、それほどまでに田中編集長のお話を聞く機会は貴重です。どのような経緯で今に至るのか、またファッションの新しい価値やつながりが、今回のテーマです。

幼い頃からファッションに強いこだわりを持っていた田中さん。それを象徴するようなお話があります。親が服を選ぶ年頃の小学4年生、田中少女は自分の着たい服が手に入らないことからイライラを募らせていきます。行き着いた先は、ミシンを駆使し生地から服を作る。なければ作る!ファッションに対する熱い思いは、わずか小学生の頃から芽生えていました。
そんな田中さんの人生を変えたきっかけは、高校卒業後に起こります。ぬくぬくとした環境に嫌気がさしたこともあり、いつしか海外に思いが馳せていきました。業界人である父親の助言もあり、イタリアはミラノにファッション留学をすることに。3年間専門学校で学び、卒業後はファッション事務所で営業職に就きました。日本人ならではの勤勉さや仕事への丁寧な姿勢から高評価を受けます。そんな中、日本はバブル時代に突入。「東京の文化」は、当時海外でも話題となりました。自分の価値に対して疑問を感じ始めていた田中さんは、東京の文化も知らないようではまだまだと考え、帰国を決意。その後、日本のファッション業界で様々な経験を経てNuméro TOKYOの編集長となりました。

ご自身の熱い思いを仕事にした田中さん。熱さは止まりません。ある時VOGUEの撮影で、カメラマンとモデルが大喧嘩し撮影が中止の危機に…という事態がありました。撮影を成功させたい一心で周囲に協力を働きかけ、その姿を見た2人が思い直し、最後には最高の作品が完成しました。周りをも動かす程の原動力は、何だったのでしょうか。田中さんは責任感だったと言います。例え自分がタダ働きになっても、腹をくくってでも仕事に取り込む。目標を見失わず進めば、必ず気持ちは伝わると。田中さんは、成功のなかに失敗があると言います。失敗の反対は成功ではなく、何も行動を起こさないことこそが失敗だと。ときには挫折も大切。この軸をもつ田中さんだからこそ、多くの方から支持されているのだと思わずにいられませんでした。人と人との関係性がものを生み出す。だからこそ「気持ち」はとても大切なのです。

ここから先は、よりファッションの価値について深掘りします。ファッションと、そして別の何かがつながることで生まれる新しい価値について、多くの参考事例を紹介いただきました。例えば、「ファッションとアートの出会い」。価値を上げるためにアート作品とコラボしたブランドの例です。閉ざされたアートの世界を、ファッションを通じて大衆化させることで多展開を実現しました。次に「hip-hopやストリートカルチャーとの出会い」。音楽とコラボすることでファッション業界は、新たな角度から注目を集めることに成功しました。これも多展開へとつながります。これらの新たな融合の中でも、最も田中さんが注目した出会いは「アニメ」と「SNS」。アニメなどのキャラクターをブランドモデルとして起用したところ、原作ファンを中心に好評を記し、まさに賞賛の嵐!売上にも大きく貢献した事例となりました。また今の時代、業界人でなくとも一般人が活躍できる世界となっています。そう、SNSの登場です。田中さん自らが、気になるターゲットにはSNSを通じてアクションを起こしているそうです。自分の価値観や世界観を発信しやすくなった世界だけでなく、業界側にとっても新しい価値を見つけやすい世界となっていました。

「点と点をつなぎ、ファッションが新たな価値を見出してきたことと同様に、あなた自身の可能性をつなげていくことが、自分の新たな価値を見出すきっかけとなる」。
ファッションに熱い思いをぶつけていた少女の姿が垣間みえた、業界トップ編集長の言葉には少女のころを同じ熱量があり心に熱く伝わりました。

田中 杏子さん

SPEAKER

10月30日生まれ。ミラノに渡りファッションを学んだ後、第一線で活躍するファッション・エディターのもとで、雑誌や広告などに携わる。帰国後はミラノでの経験を活かし、フリーランスのスタイリストとして活動。流行通信やELLE JAPONの契約スタイリストを経て、VOGUE NIPPON創刊時より編集スタッフとして参加。ファッション・エディターとしてのキャリアを重ねるとともに、広告やTV番組の司会、また資生堂「Maquillage」キャンペーンのファッション・ディレクタ?の職を2年間兼務するなど多方面で活躍。2005年11月より Num?ro TOKYO編集長に就任し、1年半の準備期間を経て、2007年2月に創刊、現在にいたる。編集長としてのみならず、同誌ファッションページのスタイリングや、他ブランドのアドバイザーやディレクションなども行う。
著書 『AKO’S FASHION BOOK』(KKベストセラーズ刊)

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