イベントレポート | SPEAKER 島田哲也さん

開催されたPOLA TALKER’S MUSEUMの内容をご覧いただけます。

POLA TALKER’S TABLE

POLA TALKER’S MUSEUM REPORT

11.12(sun)
五感と料理 ー 料理は最大のデザインである

SPEAKER 島田 哲也さん

今回のスピーカーはフレンチの料理人、島田哲也さん。長年盛況だった恵比寿のレストランを閉め、現在は舌の肥えた大人達が集まる人形町に移りビストロ「人形町・イレール」を開いています。元々シェフになる前はセミプロのロックベーシストと、料理界ではかなり異色の経歴の持ち主。そんな島田さんが本格的に料理人としての感覚を磨いた場所は、修業で渡ったパリだったそうです。サービスのタイミングを身体に叩き込まれたのは、パリで最初に働いたブラッセリー。ほとんど準備をせず渡仏したため言葉もままならないなか、覚えることが楽しくて時間も忘れて働いたとか。「忙しい店で、ランチだとピークは1時間半。その間に、6皿のコースで40席なので実に240皿を運ぶ。お客様のペースや好み、キッチンで肉を焼いている香りや音も意識しないと満足なサービスが提供できません。“お前、後ろにも目をつけろよ!” と先輩に言われて。1時間半、突っ走る感覚でした」。そして五感を駆使して味を創造することを学んだのは、憧れだった三ツ星レストラン『アルページュ』のシェフ、アラン・パッサール氏との仕事から。一般的にシェフはメニューを変えるとき分量もすべて書いたレシピを渡すところ、パッサール氏のレシピにはニュアンスを伝える散文詩的な言葉だけが並んでいたそうです。「この魚が●●色に変わったらひっくり返して、魚が何かを訴えるように感じたら……という感じ。解読するのが大変です。でも自分なりに解釈して彼の目の前で作ってみせると、彼が“ここはもっとこうして”と入ってきて、徐々に一皿が構築されていきます。彼と僕、2人でメニューを創り出す喜びとそのとき養った感覚を、今も活かして皿に表現しています」。
そうした中、島田さんが料理において今最も大切にしているのは温度と香り。それが恵比寿から人形町に店を移したとき、ビストロ形態にした理由の一つでもあるそうです。
「レストランだと厨房とお客様が遠いけれど、うちはオープンキッチンだから肉を焼いている香りや音がお客様にも伝わり、説明しなくても飲みたいワインが本能的に浮かんでくる。こちらの気持ちをしっかり伝えられて、自然な流れで食を楽しんでいただけるところが気に入っています」。さらに1年半前からは30歩ほど歩いた場所にスタンディングの日本酒バーもオープン。お互いの店を行き来するお客様も増え、俄然面白くなってきた様子の島田さんです。

 ほかにも初めて鍋でご飯を炊いた子ども時代のお話や、準備不足の渡仏での失敗エピソードなど、楽しい話題に会場も夢中で聞き入り、また参加者の方からの質問も出てあっという間にお時間に。お別れに島田さんがクリスマスシーズンに向け、私たちにも手軽にできるフレンチの一品として、ポトフやシュークルートを提案してくださいました。
「煮込み料理って温かい状態で出せるから、気持ちも伝わりやすいですよね。ぜひお洒落な鍋で作って食卓を囲んで、ご家族や友人と盛り上がってください」。

島田 哲也さん

SPEAKER

23才で渡仏。パリ「オランプ」(1ツ星)、「ルカ・カルトン」(3ツ星)、「アルページュ」(3ツ星)にて研鑽を重ね、その他、パティスリー、ブーランジェリーなどで修行。 「アルページュ」のシェフ、アラン・パサール氏に認められ、日本人初の魚担当シェフに抜擢。パサール氏の野菜へのこだわり、食材の調理法に、大きく影響を受ける。帰国後、池袋でシェフを経て、恵比寿に“身体にやさしいフランス料理”をコンセプトにしたレストラン「イレール」をオープン。料理は勿論の事、奇抜な黄色い内装は料理界以外のファッションメディアにも注目される。日本の四季で育つ野菜に着目し、“日本食材”を用いたフランス料理が話題となりテレビ、雑誌で取り上げられる。その後、「イレール・ドゥーブル」、「イレール・ボントン」などを展開し、2013年9月、念願のビストロ「イレール・人形町」をオープン。
【主なテレビ出演】 NHK「きょうの料理」、「きょうの料理 ビギナーズ」、「食彩浪漫」、フジテレビ「料理の鉄人」、「お料理BAN・BAN」、「郁恵・井森のDeli・Deliキッチン」、BSフジ「デイリー・キッチン」、BS朝日「男たちの食宴」など多数。
【主な著書】 『カジュアル・フレンチ40レシピ』河出書房新社、『フレンチhomeデザート』(河出書房新社)、『5色の野菜料理』(ソニー・マガジンズ)

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