ミャンマーの暮らしを支える、女性たち「美しい手織りの布に魅せられて」/モリンガ・今野まやの「アジアの手仕事」

Culture
09 APR 2024

世界の暮らしには、私たちの知らない美しいもの、おいしいもの、たくさんの楽しみがあります。約4年半、ミャンマーで暮らした経験を持つ、今野まやさんが出合った、美しいアジアの手仕事、暮らし、文化を紹介します。今回のテーマは継承される手織りの技術と、民族の伝統柄の布についてのお話です。大自然と寄り添う暮らしとともに、お楽しみください。

女性と手織り布


美しい布の国

こんにちは。moringa(モリンガ)の今野まやです。

夫の転勤で始まった家族4人のミャンマー暮らし。滞在4年半の間には、美しい異文化に触れ、たくさんのことを学びました。なかでも私にとって大きかったのが、ミャンマーの美しい手織りの布との出合いでした。

ミャンマーの町を歩くと、人々の姿を通じて、いろんなテキスタイルを目にします。

なぜなら、現地の人たちが身に纏う服は、ほとんどが手づくりで、デザインも、色も柄も、人それぞれ。既製品の服を買うよりも、美しい生地を購入し、好みのスタイルでオーダーしたり、自分たちの手で縫製したり、生地から仕立てていきます。


娘の服を手づくり

子ども
私も感化され、素敵な柄の手織りの布を見つけるたびに、娘の服をつくっていました


ミャンマーで出合った美しい手織りの布たち

美しい布
一目惚れして購入した美しい布
美しい柄
手織りで表現される美しい柄の世界に引き込まれます


継承される民族伝統の柄

私が生地を買いに、よく訪れたのは、ヤンゴンの「ボージョーアウンサンマーケット」。1926年に建てられた建造物のなかに、布地はもちろん、宝石、食料品店など、たくさんのお店がぎっしりと並び、足を踏み入れるたびにワクワクと気分が上がります。

多民族国家のミャンマーには、たくさんの種族が生活し、それぞれに独自の文化があります。民族衣装も違えば、当然、素材の生地の模様も異なります。

マーケットは、そんな、民族ごとに継承されてきた技術から生まれる、美しい手織りの生地が集まる場所でもあるのです。

美しい布は、日本でも手にしたり、見たりしてきましたが、こんなにたくさんの量の手織りの布を見たのは初めての経験でした。

マーケットの壮観な布のディスプレイ
マーケットの壮観な布のディスプレイ

column フリーマーケットでの布選びのコツ

海外のマーケットではたくさんの生地に出合えます。購入するときには、3つのポイントを意識して選んでいました。国内のフリーマーケットでの布選びのご参考に。

check1:編み目がしっかりしているか

check2:柄がそろっているか

check3:店のテイストが店主のものさしできちんと統一され、かつ自分の好みに合うか


ミャンマーで出合う民族の柄、いろいろ

ビルマ族の柄

波打つ柄が特徴的。

波打つ柄
織物
1本1本の糸を巧みに操り、美しい柄をていねいに織っていきます


チン族の柄

技術力が高く、ミャンマーの織物を牽引する民族です。特別な技法による高価な布から、手頃でカジュアルな布まで幅広くつくっています。

チン族の柄

チン族のお店「YO YA MAY(ヨーヤーメー)」

チン族の布といえば、ここ。クオリティ、情熱ともに素晴らしく、長年、チン族の布の継承と技術向上のために尽くしてきたお店です。

クッションカバーやラグ
チン族によって織られたクッションカバーやラグ、バックなどさまざまな布製品が集まります


村の風景〜バッグのその向こう側の物語〜

モリンガでは、ミャンマーの伝統的な技法でつくられた手織りの生地をつかって、主にバッグを制作しています。仕事で村を訪れると、暮らしに根付いた織りの風景に出合えます。

村の風景
静かで穏やかな村の風景
布織
伝統化粧を施した女性が静かに布を織り進めています


モリンガ立ち上げのこと

モリンガのブランドの始まりと、転勤当初の話を少し。

ミャンマーで暮らし始め、忙しかった日本の日々から一転、時間を持て余す日々を過ごしていました。

ものが足りなくて困っている人々の現状を目にするたびに、この時間を生かせないか、もしかしたらこんな私でも役に立てることがあるかもしれない、と自然に考えるようになっていきました。

その後、あるNGO法人で働ける機会をいただきましたが、残念ながらその会社が解体。それから独立を決め、友人とともに始めたのが、ミャンマーの美しい手織りの布を使ったバッグのブランド、モリンガでした。

ミャンマーには生活の問題に悩みつつも、自立する術がわからず、立ち止まっている女性がたくさんいます。

モリンガの立ち上げには、そんな女性たちに技術の大切さを伝え、生活の手助けができるようにとの思いを込めました。

そして少しでも多くの方に、ミャンマーに息づく美しい技術の素晴らしさを知ってもらえるように。

クッションカバー
モリンガで制作したクッションカバー。村の女性たちの手織りの技術があってこそ、美しく完成します
織物

今野まや(いまの・まや)
モリンガ主宰。7年前に夫の転勤によりミャンマーへ移住。現地でミャンマーのものづくりに触れ、2016年、手織りの布を使ったテキスタイルブランドmoringa(モリンガ)を設立。2019年家族とともに帰国。

この記事は、扶桑社『天然生活』(初出日:2021年10月4日)より、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、pola_web@pola.co.jpにお願いいたします。

JOURNAL トップ

  • トップ
  • コラム
  • JOURNAL
  • ミャンマーの暮らしを支える、女性たち「美しい手織りの布に魅せられて」/モリンガ・今野まやの「アジアの手仕事」