POLA TALKER'S TABLE(ポーラ トーカーズ テーブル)
LINEで送る

POLA TALKER’S MUSEUM

開催されたPOLA TALKER’S MUSEUMの内容をご覧いただけます。

POLA TALKER’S MUSEUM REPORT

12/9(sat)

言葉でつながる

Speaker 柴崎 友香さん

12月の土曜日お昼時ということで、家族連れで賑わう二子玉川の蔦屋家電。

その会場の一角で開催された今回の『POLA TALKER'S MUSEUM』のスピーカーは、小説家の柴崎友香さん。時折、会場に集まった方々と共に会話を挟みながら、和やかな雰囲気の中でトークセッションは行われました。幼いころから本や漫画、映像が大好きで、その全てにおいて「言葉」という点に特に関心を持ったそうです。幼少時の着眼点が、のちの小説家、柴崎友香さんを生んだと確信しました。

大学生卒業後は事務職に就くなど、一般人と同じ過程ののちに小説家となった柴崎さんが、小説を書くうえで心がけていること。それは「読み終わったあと、いつもとは少しだけ違う世界を見せること」。そのために、日頃から物事をよく見ることに意識をおいています。自分の思いこみや先入観で捉えず、常にフラットな気持ちで物事を見つめることが大切だと語ります。

ではどうやって、そのフラットな気持ちを持ち続けるのか?実は、「パノラマ写真を撮る」にその全てが詰まっています!携帯機能でパノラマ写真を撮られた経験がある方も多いのではないでしょうか?
パノラマ写真は、複数の写真を撮影、その後合成することで1枚の写真として形になります。そのため一見自然に見える写真も、実は「別の空間をつなげること」で作り上げられています。そのため、写真をよく見ると・・・人の手が消えてたり、はたまた人自体が消えていたり?!パノラマ写真の魅力は、こういった「時間や空間のズレ・歪み」であること、そしてこの魅力は小説にも通ずると柴崎さんはいいます。奇妙な歪みは、妖怪や怪談の作品をつくる際に参考となりました。
パノラマ写真は、ただ単に奇妙なものを生みだすだけではありません。その広角から様々な人間模様を写します。Y字路の二股を撮影した写真では、左の通りには道に迷ったようなサラリーマン、右の通りには自転車で颯爽と走るおばさん。お互い知らない存在同士なものの、絶対的に同時に存在している世界。決して交えない人間模様を俯瞰して切り取ったパノラマ写真から、柴崎さんは色々なものを読み取ります。

小説には、行くことができない場所、会えなかった人、見えなかったものをつなげる力があるといいます。パノラマ写真が1枚の絵として表現する「互いが共に同じ空間・時間で生きるつながり」を小説として表現することが、柴崎さんのオリジナリティを作っているように感じました。ただ日常の1シーンで得た感情を言葉として生み出すことは、日々戦いであるとのこと。時には言葉が生み出せなくなるときも。そんなときは、幼少時から触れあってきた本や映画を手にとり、「こんな面白いことができるのか・・私もやりたいな」と気持ちを奮い立たせているそうです。

小説に限らず作品は無からは生まれない、と柴崎さんはいいます。生きてきた知識や経験が作品になる。会場でお話をお聞きになられた方、当コラムを読んでいる方、全ての方と「言葉」で、そしてお互いが知らないながらも絶対的に同じ世界で生きている「存在」としてつながっています。このつながりが何かを生むきっかけとなる、そんなことを感じたトークセッションでした。

speaker

柴崎 友香さん
1973年 大阪生まれ。
2000年 初の単行本『きょうのできごと』を刊行(2003年 行定勲監督により映画化)。
2007年 『その街の今は』で、第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、2006年度咲くやこの花賞 受賞。
2010年 『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。
2014年 『春の庭』で第151回芥川賞受賞。

著書に『わたしがいなかった街で』『パノララ』『かわうそ堀怪談見習い』『千の扉』『よう知らんけど日記』など多数。

戻る

ページの先頭へ