POLA TALKER'S TABLE(ポーラ トーカーズ テーブル)
LINEで送る

POLA TALKER’S TABLE

開催されたPOLA TALKER’S MUSEUMの内容をご覧いただけます。

POLA TALKER’S MUSEUM REPORT

2/25(sat)

記憶をカタチに残す本の作り方

Speaker鈴木 麻弓さん

二子玉川の蔦屋家電を会場に開催されるイベント『POLA TALKER'S MUSEUM』第一回目のスピーカーは、世界的に活躍するフォトグラファーの鈴木麻弓さん。彼女の出身地は、東日本大震災で津波の被害を受けた宮城県女川町。海の近くにあった生家の写真館は津波に流され、そこに暮らしていた両親は今も見つかっていないといいます。以来、故郷で復興に携わる人々や風景を撮り続け、昨年からは新たな表現の手段として、写真館の跡地で見つかった父親の泥まみれのレンズを使った撮影をスタート。暗くぼんやりとして、まるで亡くなった人たちが眺める景色のように感じられたというその画像を、プリントする紙の質感まで吟味して、みずから一冊ずつ糸で綴じて製本した『THE RESTORATION WILL』を2017年春に発表。写真に加え、その見せ方にも工夫を凝らした手製本は国内外で評判を呼び、今年12月にはイタリアでも出版されることに。
撮影のみならず製本まで手がけた理由を、「泥の中から見つかった父のレンズは、手にとるとザラザラしていました。そのときの感触の記憶を、紙の手触りでも伝えたかったんです」と鈴木さん。また、見開きごとに観音折りになっていたり、蛇腹折りになっていたりといったさまざまな加工も、「ページをパタンと開いたり閉じたりするアクションも含め、一冊の本の中で一つの物語を表現したいと思いました。映画のように、観ているうちに当事者の家族や友達になったような気分を味わってもらえたら…」。そうした作品作りのひらめきは、「天才じゃないので降りてきたりはしません(笑)。時間はかかるけど、ひらめきはアイデアの泉ですから、その最初の泉にたどりつくまではあらゆることをします。大切なのは努力を惜しまないこと」
トークに続くワークショップでは、二通りの本の綴じ方を鈴木さんがレクチャー。まずひとつは、A4用紙10枚と表紙用の厚紙を二つ折りにして重ね、折り目に開けた3か所の穴に紐を通して綴じるシンプルな方法。もうひとつはグッと難易度が上がり、二つ折りにしたA4用紙20枚を4枚一組にして、折り目に穴を7か所開けて重ね、その上下を同様に折りと穴を施した厚紙で挟み、糸を穴から穴へ通したり、糸と糸をクロスさせたりを繰り返して一冊に綴じていく方法。まるで編み物のような複雑さに、同じテーブルを囲む参加者同士で質問し合ったり、失敗を笑い合ったり、器用な人を称賛したり、会場は次第に和気あいあいとした雰囲気に。ギブアップの声をもらす男性も現れる中、ようやく完成したときには安堵と達成感で誰もが笑顔に!
イベント会場はAR(拡張現実)によるアートと最新テクノロジーの融合を体感できる空間。その中でいわば対極にあるような本を糸で綴じるという手仕事の温もりに触れ、アート界の奥行きを感じたひとときでした。

speaker

鈴木 麻弓さん

フォトグラファー。宮城県女川町出身で、3.11以降、故郷の人々や風景を撮影した作品を多数発表。代表作『THE RESTORATION WILL』のほか、個展を国内外で開催し、注目を浴びている。2016年HARIBAN AWARD(京都)審査員賞、2017年カナウスフォト(リトアニア)グランプリ、2017年Aperture Book Award(アメリカ)ショートリスト選出など、国内外で受賞歴多数。2017年12月には『THE RESTORATION WILL』をイタリアCIEBAより出版予定。

戻る

ページの先頭へ