「ポーラ」の存在意義と
ポーラ・オルビスグループの戦略。
そして、未来を担う
人財に伝えたい想い。

Presented by Satoshi Suzuki
株式会社ポーラ 取締役会長
鈴木郷史

創業者の想いの中にこそ、
私たちの進むべき道がある

「最上のものを、一人ひとりにあったお手入れとともに、直接お手渡ししたい」。この創業者の言葉の中にこそ、ポーラの原点があると思います。1929年、創業者の鈴木忍は、厳しい生活のために手が荒れてしまった妻をいたわって、独学でクリームをつくりました。やがて自らクリームを自転車にのせてお客さまを訪ね、一人ひとりに直接説明し、ご要望に応じて必要な分だけを量り売りでお届けしていきました。ポーラの主力事業である訪問販売というシステムは、このような創業者の歩みから生まれてきたものです。

それから80余年経った現在、ポーラ・オルビスグループは、多様なブランドと多角化した販売チャネルによって、日本ばかりでなく世界へと事業を広げています。しかし、その根幹にある、私たちが大切にしなければならない想いは変わることはありません。一人ひとりの満足に応えたいというまごころ。お客さまに喜んでいただくことこそが自らの喜びであるというホスピタリティ。そしてまた、自分が向かい合う相手の反応は、自分の鏡でもあります。自ら喜びをもって接すれば、お客さまにも心から喜んでいただけるのです。

ポーラの歴史を変えた、
ある女性社員の言葉

もちろん、ポーラの歩みもすべて順調だったわけではありません。「ポーラらしさ」を見つめ直した時代もありました。女性の社会進出で在宅率が低下し、「訪問して販売する」というポーラの主力となる事業を取り巻く環境も変化しつつあったからです。

2000年、ポーラの社長に就いた私は、ポーラの経営資源をもう一度見直そうと考えました。そのためにはまず「現場」の気持ちを肌で知らなければなりません。私は、ビューティーディレクターをはじめ販売第一線の人たちと70回以上もミーティングを重ねたのです。

また同時に、ビューティーディレクターが経営する全国すべての店舗の現状を詳細に分析しました。小さな規模だとしても着実に業績を拡大している店舗があったのです。そこから導き出されてきた答えが、個別対応によるカウンセリングの実施とエステサービスの提供という「一人ひとりのニーズに応える」ビジネススタイル。つまり、創業の原点への回帰だったのです。

2002年、ポーラはこの年を新創業年として、新たな一歩を踏み出しました。そんな新生ポーラの象徴であり原動力となったのが、カウンセリングとエステ、化粧品販売を融合させた新しいスタイルの店舗「ポーラ ザ ビューティ」の展開でした。じつはこのお店は、ある女性社員の言葉に後押しされて生まれたものなのです。「そうしたビジネスモデルを実現しないとポーラは潰れますよ」。まだその戦略が構想段階で社内に反対の声もあった中、決断のきっかけを作ってくれた彼女は、その後、「ポーラ ザ ビューティ」の立ち上げから全国展開まで担当してもらいました。

彼女ばかりではありません。今振り返ると、決断を下さなければならない様々なシーンで多くの社員との出会いがあり、彼らの力に背中を押されてきました。ポーラ・オルビスグループとは、そんな社員一人ひとりの想いが集まった企業グループなのです。

化粧品ブランドから、
ライフスタイルブランドへ

ポーラは、1985年に「POLA」に次ぐブランド「ORBIS」(オルビス)を立ち上げました。2005年、ポーラ・オルビスホールディングスを設立。グループ経営体制によるマルチブランド戦略を進め、現在、国内外で9つのブランドを展開しています。

ブランドの価値を磨きあげていくためには、私は、ブランドと経営者は一体でなければならないと考えています。ひとりの経営者が将来競合するかもしれない複数のブランドを抱えていては、それぞれのブランドにとって最良のソリューションを選択できない可能がある。しかし、ひとつのブランドについて、ひとりの経営者が自身のパーソナリティを加味し機動的に決断を下していけば、各ブランドの成長が加速し、結果としてグループ全体としても成長できます。

今後は、それぞれのブランドの個性をさらに際立たせていくとともに、新しいブランドの開発にも取り組んでいきます。もちろん、グローバル展開は重要な課題であり、積極的に進めていくことは言うまでもありません。しかし、私は、海外売上比率が何%か、といった数字にはあまりこだわるつもりはないのです。それよりも、世界のマーケットで競うことによってブランドのアイデンティティがより鮮明になるといった、相乗的な効果に期待しています。

ファッションにしろ、自動車にしろ、ラグジュアリーなブランドは、お客さまのライフスタイルにまで影響を及ぼす力を持っています。その意味でも、ポーラは、化粧品という枠組みを超えたライフスタイルブランドを目指すべきだと考えています。今後は、暮らしのシーンにまで踏み込んだ、プロフェッショナルによるカウンセリングの徹底に注力していきます。ここでも鍵を握るのは、

やはり「一人ひとりにお届けする」という人の力なのです。

80余年の想いを共有して生まれてきた言葉

ポーラは、2016年から新ブランド戦略をスタートし、新しい企業理念を策定しました。この企業理念にある「Science. Art. Love」というキーワードを見ると、感慨深いものがあります。

私は、入社して間もない1988年、ポーラの近未来の戦略を考えるプロジェクトのリーダーを任されました。そこで私たちが選択したキーワードが「サイエンス」「アート」、そして「サービス」だったのです。このひとつだけ異なる「サービス」というワードは、その後2000年代から展開されることになるカウンセリング販売を意識して、あえてわかりやすい言葉を選んだものです。もう少し概念的に言うならば「ホスピタリティ」でしょう。事実、2002年の新創業ではその欠かせないキーワードとして、「ホスピタリティ」を掲げています。それをさらに進化させたものが「ラブ」であることは言うまでもありません。

私は、新しい企業理念をつくるプロセスにはまったく関与しませんでした。ですから、これらのキーワードは偶然一致したのでしょう。しかし、それは必然性のある偶然だと思っています。創業の想いを受け継ぎ、ともに喜怒哀楽を重ねながら育まれてきたポーラのDNAから生まれた価値観なのです。これからも、この想いをさらに膨らませていく人材を育てていきたいと考えています。

未来を見据え、
次代のリーダーの育成に取り組む

20代後半~30代前半の若手社員を対象としたポーラ・オルビスグループの横断研修、「未来研究会」がスタートしたのは2005年です。狙いは、名称のとおり、グループの未来の経営を担う人材を育成することにあります。次代を育てることは、経営者にとって欠かすことのできない責務です。まさにグループ経営体制によるマルチブランド戦略に着手した時期でした。将来のために、多様なグループ会社を担う経営者を若手のうちから育てていくべきだと考えたのです。

その後、「未来研究会」に続いて、2007年に「経営幹部養成講座」、2013年に「コーチングプログラム」を開始し、少数精鋭による研修体制を整えてきました。「未来研究会」の立ち上げから10年が過ぎた今、その継続的な取り組みが開花し始めています。ポーラの社長をはじめ、グループの経営陣に、あの頃若手社員だった40代の人たちが次々と加わっています。

これは私自身がずっと実感してきたことでもあるのですが、リーダーには常に幅広い視野と柔軟な発想が求められます。ところが、変わらない環境でずっと仕事をしていると、どうしても視野が狭く頭が固くなりがちです。ポーラ・オルビスグループでもしばしばそんなシーンを見かけます。

そこで2015年、箱根のポーラ美術館にグループの経営幹部が全員集まってユニークな研修を実施しました。同美術館の学芸員からアートに関するレクチャーを受けるとともに、さまざまな作品を目前にして感想を語り合う「アート研修」です。

この研修が想像以上に素晴らしかった。優れたアート作品と向き合うと、非日常的な感情や概念が次々と湧き上がってきます。自分の中にある感性を知り、一人ひとりの異なったものの見方を語り合うことは、多様な考え方や思わぬ発想を理解する上で非常に有意義な経験なのです。これからも継続して続けていきたいと考えています。

素直な気持ちと情熱を大切にしてほしい

私は学生時代、機械工学を学び、将来は熱伝導装置のスペシャリストになりたいと思っていました。そして自動車メーカーに就職しエンジニアとなり、その後にポーラへと入社しました。これは、こうした私自身の経験でもあるのですが、どんな分野でも深く突きつめていくと、やがて世界が広がって人や社会につながっていきます。アートなどの世界でも共通ですが、専門的な領域でトップクラスの才能を発揮している人は、必ず他にも多様な能力を備えているものです。

これは、企業での仕事でも同様でしょう。これだけは負けないという得意分野を持ちつつも、その専門性に甘んじることなく、広い視野に立って積極的に仕事の幅を広げていくべきです。

その意味では、苦手や得意を考える前に、自分が置かれた環境を素直に受け入れてみることも大切です。一度すべてをゼロにして、目の前の世界に飛び込んでみる。そうして素直な気持ちになって見えてくるものを掴みあげていく。人の成長とは、その繰り返しだと思います。

これからポーラ・オルビスグループに飛び込んでくる若い人たちにも、そんな素直な気持ちと情熱を大切にしてほしいと思っています。どんな仕事であろうと、探求する先で最後は必ず人や社会に結びついていきます。そして、そのプロセスを経てこそ、ひとりの人間として成長することができます。

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